国別戦略の策定

バングラデシュやその他の国に合わせて策定された解決策

 

労働環境の改善に伴う課題は国によって大きく異なり、持続的な変化の達成にはその国特有の経済、政治、事業、文化的環境に基づいてアプローチを考える必要があります。そこでGap Inc. は、工場での取り組みを改善するため、リスク評価や戦略立案にあたって各国個別のアプローチを策定しました。これらの評価にはリスク指標や専門家による分析とともに、社会的、政治的、環境的データが含まれています。また、さまざまな社外関係者やビジネスパートナーとの関わりを通じて集めた知見も活用されています。

file


私たちが直面する課題は国によって大きく異なり、多くの場合、その国の経済、政治、事業、文化的環境に合わせてアプローチを変える必要があります。

バングラデシュ
 

2013年4月、バングラデシュのダッカ郊外にある縫製工場の複合ビル「ラナ・プラザ」で世界のアパレル業界の歴史上最悪の悲劇が起き、1,100人以上の労働者の命が奪われました。バングラデシュの縫製産業はおよそ5,000の工場を有していますが、Gap Inc. がサプライヤーとして認定している工場はそのうちの70に満ちません。当社はラナ・プラザの工場からは商品を調達していませんでしたが、この悲劇は私たちにも大きな衝撃を与えました。そして、世界中のアパレル企業と同じように、このように悲惨な事故が二度と起こらないよう早急に対策を講じる必要性を感じました。

ラナ・プラザの倒壊から数か月後、バングラデシュ労働者安全連合の創設にGap Inc. も協力しました。この連合では、さまざまなアパレル企業やブランドが団結し、火災予防や建物の安全性に焦点を当て、バングラデシュの労働環境の安全性の向上に取り組んでいます。連合は拘束力のある公約を掲げ、期限を設けて目に見える変化を生み出すべく幅広い活動に投資、その実行に取り組んできました。また、取り組みの進捗状況を測定し、結果を公表するよう尽力しています。

連合の取り組みにおける基本理念の一つは、労働者にバングラデシュの縫製産業の改善に参加してもらうことです。連合は火災予防や建物の安全性に関わる問題について意見や見解を聴取するため、全工場を代表する28工場の3,200人以上のバングラデシュ人労働者を対象に、アンケート調査と職場を離れた場所でのインタビュー調査を実施しました。ここで得られた知見は、より良い解決策を考案するために活用され、公共資産として公表されています。

持続的な改善を行うためには二重戦略が必要である、という重要な発想も連合の取り組みの指針となっています。連合は工場内の安全性の問題に取り組むと同時に、バングラデシュの縫製工場で働く人々の安全や心身の健康に影響を与える広範で複雑な問題にも取り組んでいます。規制の不足や不十分な施行、脆弱な労働法、技術力や経験の不足などがその例です。

2015年9月には進捗状況を詳説した2回目の連合年次報告書が発行されました。連合発足以来2年間の重要な成果と出来事は以下のとおりです:

  • 連合加盟企業の商品を製造する全工場の構造、防火や電気保安状況を調査し、調査結果を連合のウェブサイトで発表しました。
  • 110万人以上の労働者を対象に防火トレーニングを実施しました。
  • 500以上の工場で実行中の改善努力を検証しました。
  • 連合が運営する労働者ヘルプライン(Amader Kotha、私たちの声の意)を400以上の工場に拡大しました。ヘルプラインの開設以降、2万件以上の電話が寄せられています。
  • 工場の検査や改修工事に伴う閉鎖が原因で解雇されたり、働くことができなかった6千人以上の労働者に経済的な補償を提供しました。
  • 低コストな資金調達で工場向け融資に1億ドルを拠出し、国際金融公社(IFC)と米国国際開発庁(USAID)に二件のクレジット・ファシリティ(与信枠)を設けました。
  • 国際労働機関(ILO)が実施するベター・ワークとともに工場で労働安全衛生委員会の試験プロジェクトを立ち上げました。

連合は今後、政府、地元のブランド事業者団体、市民社会、その他の関係者との協働を継続し、これまでの成果を足掛かりにさらなる発展を目指します。何よりもまず、Gap Inc. は連合の取り組みがバングラデシュの縫製工場で働く人々や縫製産業に持続的な変化を確実にもたらすよう支援していくことを約束します。

file

カンボジア
 

私たちは、カンボジアの労働慣行や労働環境の改善を支援するため、この国の縫製工場で働く人々の結社の自由を促進すると同時に彼らの参加するプログラムを支援し、彼らの心身の健康へのリスクを軽減するための支援を行うことを最優先事項としています。

カンボジアの8つの主要な労働組合連合とカンボジア縫製業協会は、独立機関である仲裁評議会(AC)に労働者と工場経営者間の労使紛争の検証および仲裁を一任する覚書を締結しました。私たちは労働者とサプライヤー間の平和的な紛争解決のプラットフォームとしてACを積極的に支援してきました。私たちは、ACの決定に従わないサプライヤーに関して労働組合が懸念を表明した際は、工場の管理者にACの仲裁判断を尊重し、順守するよう伝えました。

また2014年には、Gap Inc. と当社のサプライヤーはACのラジオ学習プログラムの支援を通じて、カンボジアの労使紛争の防止と解決に対する縫製工場で働く人々と雇用主の意識向上を支援しました。

当社はベターファクトリーズ・カンボジアとの協力の下、すべての認定工場で未承認の業務委託の防止に関するトレーニングを実施しました。また、2014年7月には本トレーニング内容が当社の現場のチームにより改訂されています。未承認の工場が従業員に退職金を支払わずに閉鎖した未承認業務委託の事例を確認した際には、この問題を解決に導きました。この事例では、当社が地元の労働者団体と数か月に交渉を続け、不正を行ったとされるサプライヤーとその被害に遭った従業員の間の和解が実現しています。

2001年、ILOのベター・ファクトリーズ・カンボジア・プログラムの創設を支援したGap Inc. は下記に挙げる当プログラムの数々の取り組みを支援、協力しています:

  • トレーニング―私たちは、労働者の権利や心身の健康に関わる問題の再発防止に向け、管理体制、補償金、福利厚生に関するトレーニングプログラムに出資しています。
  • エキスパート・バイ・エクスペリエンス・イニシアティブ― カンボジアの縫製工場で発生した集団失神事件に対するベターファクトリーズ・カンボジアの対応に財政的な支援を提供しました。このプログラムは(1)工場従業員の視点や知見を把握するための仕組みを開発する、(2)工場従業員が問題を理解する手助けをする、(3)防止や適切な対応のための知識を提供するという役割を果たしています。 
  • 食料供給プログラム―当社はベター・ファクトリーズ・カンボジアが栄養と業務の生産性の関連性を科学的かつ経験的に立証することを目指して実施している、縫製産業において栄養が及ぼす影響の調査を支援しています。 
  • ワン・チェンジ・キャンペーン―私たちはこのキャンペーンの資金調達を支援し、BFCの指定リストから管理慣行の変更点を一つ以上選び導入するという工場向けキャンペーンへの参加をサプライヤーに促しました。

Gap Inc. は2009年からケア・インターナショナルと連携し、カンボジアの縫製工場で働く女性の活躍を促進するP.A.C.E. プログラムを実施しています。

ミャンマー
 

米国政府が2012年にミャンマーに対する制裁を解除すると、Gap Inc. は慎重な審議を経て、2014年に米国リテーラーとして初めて同国から衣料品を調達しました。ミャンマーでは長期的に経済的な孤立状態にあったこと、開発が初期段階であること、最低限の法規範しか整備されてないことから、一般的に労働慣例や労働環境の水準が低いのが現状です。私たちは、このようなミャンマーの困難な現状を十分把握するため追加措置を講じ、この国の縫製産業全体の持続可能性の向上を促す高い基準を設けました。

国の現状を理解するためには、ミャンマーの市民社会や労働者団体、米国政府機関、ILO、ミャンマーの専門知識を持つ国際NGOとの会議を開き、対話を持ちました。このような話し合いを通じて、私たちは人権問題、規制問題、政治問題が労働者や事業にどのような影響を与えているか見極めることができました。

またGap Inc. は、国や産業レベルで継続的にリスクを特定、評価、対処するための年次リスク評価プロセスを実行しました。このプロセスではミャンマーの社会、政治、規制環境の変化に対する評価、対応を行うため、データ、リスク指標、専門家による分析を組み合わせて活用します。

私たちは工場の管理者、従業員、ILOやヴェリテなどの第三者機関の専門家と密に連携し、ミャンマーでの当社のブランドの調達先である2か所の工場で労働慣例や労働条件の大幅かつ持続的な改善を図りました。 また、米国政府の責任投資報告要求に従い、調達活動に関する公式な報告書を自主的に提出することを決定しました。

変化には時間がかかりますが、私たちにはなすべきことがまだあります。ミャンマーで協働する2つの工場では以下の重要な改善や取り組みを行いました:

  • 未成年者の雇用、休暇の不足、不適切な懲戒慣習に対処する方針や手順を策定しました。
  • 過度の時間外労働を削減し、時間外手当を修正しました。
  • ILOや米国政府と連携し、労働者と管理者の関係改善し、より良い話し合いの実現、そして問題解決を図るため、結社の自由や社会的対話に関するトレーニングを実施しました。
  • 監督者から不当な扱いを受けた労働者のための救済制度を提供しました。
  • 職場での振る舞い方や苦情を伝える手段に関するトレーニングや、懸念に対処するための調査プロセスなど、苦情に関する新しい方針や手順を実施しました。
  • Gap Inc. のP.A.C.E. プログラムをミャンマーの工場や地域社会で実行しています。

The Short Story

  • Gap Inc. は地域戦略の大部分に一貫性を持たせている一方で、異なる文化やニーズに合わせたアプローチも策定しています。
  • Gap Inc. はバングラデシュ労働者安全連合の創設を支援し、同連合において指導的役割を果たしています。
  • バングラデシュ労働者安全連合は、広範囲にわたる工場調査や従業員を対象とした防火トレーニングの実施などに取り組んでいます。
  • Gap Inc. はカンボジアにおける結社の自由を積極的に促進し、ILOのベター・ファクトリーズ・カンボジア・プログラムと連携しました。
  • ミャンマーでは労働者団体や政府などから意見を聴取し、労働環境の改善に向けたアプローチを策定しました。