工場との連携  

労働環境を改善して従業員と事業を支える


アパレル業界の構造的な課題の解決には他社との連携が欠かせません。Gap Inc. はこのアプローチを大切にし、成功事例を共有し効率を高めることを目指す業界規模の取り組みに参加したり、製造施設の管理者や従業員にとって有益となる革新的なプログラムに国内外のNGOとともに参加することで、サプライヤーと緊密に連携しています。 

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当社は工場との協働方法を徹底的に見直し、さらに進歩するための土台作りを行いました。

 

戦略的サプライヤーの能力向上


私たちはそれぞれの地域社会において、自社商品の工場が雇用者として高評価を得られるよう支援しています。この取り組みは工場の労働者を支援することにもつながり、人材の定着率や生産性の向上などの良い影響をもたらします。これを実現するため、当社では多面的なアプローチでサプライヤーの能力向上を図っています。

大規模な変化をサプライヤーとの協働によって生み出すために提携する戦略的サプライヤー数を絞り込み、彼らと長期にわたり緊密な関係を結び続けることが必要です。過去5年間で認定施設数を1,200ヶ所から900ヶ所以下までに減らしています。厳選したサプライヤーとは共通のサステナビリティゴールを策定し、パフォーマンスの測定と改善に力を合わせて取り組んでいきます。

2016年9月には、当社のブランドの商品を製造する工場の名称と所在地のリストを公表しました。リストは半年に一度の定期更新のほか、随時必要に応じて改訂します。工場リストはこちらです。

第一サプライヤーには継続的にベンダー行動規範に関するトレーニングを実施しています。またP.A.C.E. 、ワークプレイス・コーぺレーション・プログラムやワークプレイス・エンゲージメント・プログラムといった先駆的な制度を通じてサプライヤーの関与を深めています。 

サプライヤーによる従業員や事業活動への戦略的投資を実現するためには、彼らが入手できる評価改善プログラムのデータや分析結果を増やしました。将来的には各サプライヤーによるGap Inc. の各種プログラムの参加状況や、パフォーマンスの改善の余地がある分野を公表する予定です。私たちは、サプライヤーがサステナビリティプログラムにさらに自主的に取り組むことで、事業に還元される利益を認識でき、外部機関による評価やインセンティブの必要性が下がると考えています。


ソーシャル&レイバーコンバージェンスプロジェクト


乱立するさまざまな評価制度やそれに応じた業務手順に従うために、本来従業員の生活を本質的に変えるために使えるはずの時間やリソースが費やされています。社会的パフォーマンス、環境パフォーマンスの測定方法を合理化すれば、体系的な進歩が促されるだけでなく、さらに多くの事業者にとってこれらのパフォーマンスを改善しやすくなると私たちは考えています。

これを背景にGap Inc. は2015年、アパレルブランド、フットウェアブランド、小売企業、業界団体、市民団体などが連携するソーシャル&レイバーコンバージェンスプロジェクトに加盟しました。このプロジェクトでは工場の社会的パフォーマンス、労働パフォーマンスの評価を行う業界共通のデータ収集ツールを設計しており、2016年に続き2017年もツールの初期バージョンの試験を継続し、2018年にはツールと検証手法を導入することを目指しています。Gap Inc. はツール開発ワーキンググループと検証手法ワーキンググループという二つの作業部会を主催し、このプロジェクトの目標達成を支援しています。

ベターワークプログラム


評価と改善を行うだけに留まらず、サプライヤーやその他の利害関係者とより密に連携するため、私たちは複数機関が参加する国際労働機関(ILO)のベターワークプログラムなどにおいて指導的な役割を果たしてきました。ベターワークは、ILOの中核的労働基準や各国内の労働法を企業や政府が順守するよう支援し、労働者の権利や心身の健康の保護に重点を置いて工場に助言を行うモニタリング活動を展開しています。ベトナム、カンボジア、インドネシア、バングラデシュ、ヨルダン、ハイチ、ニカラグア、レソトで工場の評価活動を主導し、問題の対処と改善を支援しています。

当社とベターワークの連携の歴史はベターワーク発足時まで遡ります。ベターワークとの協働は諮問活動にとどまらす、当社の調達先8ヶ国で助言活動に協力したり、製造側が自ら複数の監査を行わずに済むよう他のバイヤー企業にベターワークの評価レポートの導入を働きかけています。当社ではこれまで、ILOのベターワーク活動地域内にある工場の70%以上をベターワークに参加させることを目標としてきました。現在はこの目標を改め、ベターワークの活動国では2018年末までにプログラムに参加資格のあるすべての施設を参加させることを目指しています。

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監査結果


ベターワーク活動地域内にある自社商品の工場の45%にあたる160ヶ所がベターワークの監査を受けました。各国別では、カンボジアでは全体の67%、ベトナムでは45%、バングラデシュでは34%の工場が監査を受けています。

ベターワークプログラム活動地域における工場の監査と改善の状況(2016年)
 

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ワークプレイス・コーぺレーション・プログラム


2015年にGap Inc. はベターワークと協力し、提携施設の能力向上を目指す新たなプログラムを立ち上げました。このワークプレイス・コーペレーション・プログラムは工場の従業員や管理者に対し、職場での問題解決、協力関係の構築、職場環境の継続的な改善に必要なスキルを教育することを狙いとしています。 

当社はこのプログラムの拡大に出資し、ベターワーク未参加施設で本プログラムを展開できるよう、自社のサプライヤーサステナビリティチームはベターワークからのカリキュラムに関するトレーニングを受けました。このプログラムを通して製造施設の従業員や管理者からなる労使委員会が持続可能な解決策を編み出し、職場の課題に対する成功事例を共有できるようトレーニングを行っています。その内容はコミュニケーション、問題解決、不満への対処方法、交渉スキルなど多岐にわたります。当社のサプライヤーサステナビリティチームはこのプログラムを通して、労使間の対話の質を高めるたことを目的として効果的かつ協力的な話し合いを進める方法を工場の従業員や管理者にトレーニングしています。

私たちは労使間の対話の質の改善は、労働争議の防止問題解決、従業員の発言力の向上、生産性と競争力の向上につながると考えています。 

トレーニングを実施した製造施設数は2015年度には9ヶ国31ヶ所でしたが、2017年までに69ヶ所に拡大する予定です。2018年には新たに監督者のスキルにも重点を置き、労働者の権利や監督者自身の責任、職場におけるプロ意識のあり方などの理解を助けていきます。また、コミュニケーションスキルや効果的な傾聴法といった有益なスキルのトレーニングも行います。

ワークフォース・エンゲージメント・プログラム


Gap Inc. の商品の製造施設の従業員に安全で公正な労働環境を提供するだけでなく、従業員が職場で自分の価値が認められていると感じ、仕事に熱意を持ってもらうことが必要不可欠です。エンゲージメント(社員と会社が良好な関係を保ち相互作用すること)は労働者の心身を充実させ、ビジネスにも良い結果をもたらすという研究結果もあります。ワークプレイス・リサーチ・ファウンデーションによると、エンゲージメントの高い従業員は38%の確率で生産性が平均を上回り、従業員に投資をしているサプライヤーは投資額の3倍のリターンを得ています。 

Gap Inc. は衣料品製造業の労働環境改善に関して高い専門性を持つ大手NGO、ヴェリテと提携し、2015年にワークフォース・エンゲージメント・プログラムを立ち上げました。このプログラムでは監督者との関係、苦情処理制度、トレーニングや能力開発の機会といった重要項目に関して匿名でフィードバックを提出する機会を設け、衣料品製造従事者がどの程度職場で自分の価値が認められていると感じ、仕事に熱意を持っているかを測定し、改善することを目指しています。

アンケート調査、集団や個人面談を通じて得た量的データ、質的データを横断的に収集し、それを元にフィールドチームが見解をまとめます。 ヴェリテとともにこのプログラムを実施して2年が経ち、現在では自動音声応答技術やスマートフォンのアプリ(WeChat)、タブレットを介したフィードバック送信の試験運用を始めています。そのためにグッドワールドソリューションズと提携し、テクノロジーベースのアンケート調査を主要調達先3ヶ国で実施しました。

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当社ではヴェリテやグッドワールドソリューションズが収集したデータを受け取った後、従業員への投資について各サプライヤーに適した提案ができるように各社の労働者に関わる考察の分析を支援しています。また、当社のサプライヤーサステナビリティチームもこの分析結果を元に施設管理者に向けた労働者の満足度や知識、心身の健康を向上させるためのツールを開発しており、施設管理者向けトレーニングプログラムに役立てています。

労働者の満足度、知識、心身の健康の向上に関しては、2016年にサプライヤーのためのエンゲージメントおよび健康に関するツールキットを作成しました。このツールキットは職場で生じるさまざまな問題をより良い方向へ導けるようサポートするためのリソースを提供することを目的としています。例えば子供を持つ女性従業員のため職場に保育施設を建設するといった心身の健康増進のためのインフラへの投資にはじまり、組織構築アクティビティ、監督者スキルのトレーニングといった内容がこのツールキットで取り上げられています。

このプログラムは労働者の視点では、監督者が労働者の懸念や職場改善のアイディアに耳を傾け、それに従って行動を起こすよう促されるため、労働者自身の心身の充実に繋がります。一方監督者の視点では、労働者に福利厚生やリソースを職場で提供することで生産性と定着率を高め、欠勤率を下げることにつながるため、社会面、ビジネス面で目標達成に有効である事が分かりました。また、サプライヤー間に継続的な改善に取り組む姿勢を促進するのでビジネスに有益に働きます。このプログラムではサプライヤーに成功事例を提供や提案するので、当社の戦略的サプライヤー全社が持続可能性に基づく格付けで緑または黄色を目指すというゴールの達成にも貢献しています。

サプライヤーが従業員に投資をすればビジネスにもリターンが反映されることが証明されたなど、最近ヴェリテが独自に行った調査ではこういった働きかけがビジネスに利益をもたらすことが強調された。それと同時に、このような評価活動から得られた考察に基づいて施設管理者が行動を起こさない場合や、評価を受ける際にコーチング制度を利用して「良い回答」得ようとする場合、労働者にとって労働環境の改善はほぼ感じられないことが分かりました。  

プログラムを発展させるにあたり、サプライヤーに上記の活動に当事者としての責任感を持つことを動機付ける方法を探っていきます。このプログラムは労働環境の改善はただコンプライアンスのための作業ではなく、資本としての労働力だけに焦点を絞ることで、既存の各種評価制度を補完するものであると理解できるよう今後も施設管理者に対し働きかけていきます。さらに、BSRの労働者エンゲージメントワーキンググループを通じて、同様のプログラムを運営している他企業と成功事例の共有や労働者の心身の健康およびエンゲージメントに関するツールの統一する試みなどによってパートナーシップの発展に努めていきます。

電子決済への移行
 

縫製工場で働く人々の生活を改善し、サプライチェーンの透明性、効率性を高める手段として、Gap Inc. は2018年のはじめに約30ヶ国、約800ヵ所の一次サプライヤー工場で2020年までに現金払い主体のシステムから電子決済へ移行するという目標を発表しました。

Gap Inc. のサプライヤー工場の6割はすでに銀行口座やモバイルウォレットへのオンライン送金などの電子決済を採用しています。この新しい目標を定めることで当社のグローバルサプライチェーン全体にこの取り組みを広めることができ、100万人以上の縫製工場労働者の生活に良い変化がもたらされます。

電子決済による給与支給には、銀行口座を持っていなかった従業員に正規の金融システムを利用するきっかけを与えるという利点があります。従業員は自分の家計を自分で管理し、より安全に貯蓄、送金、投資できるようになります。また工場全体で効率やスピードが向上するため、経費削減ができるというサプライヤー側のメリットもあります。責任、透明性、安全性が強化され、関係者全員にとっても有益です。

当社はこのコミットメントを達成するため、国連を主体とした政府、企業、国際機関が参加する、貧困の削減と包括的成長の促進を目指して現金から電子決済への移行の加速に取り組むパートナーシップ、ベター・ザン・キャッシュ・アライアンスに加盟しています。

Gap Inc. は10年以上にわたり、ライフスキル教育や縫製工場の女性従業員向けトレーニングプログラム、P.A.C.E. (Personal Advancement & Career Enhancement: 個人の能力とキャリアの向上)を通じて金融リテラシーや多様性を推進してきました。このプログラムの総合的なカリキュラムにはコミュニケーションスキル、時間管理、ストレスマネジメント、問題解決と意思決定などのトピックが含まれています。P.A.C.E. の評価結果では、このプログラムは女性の知識、スキル、自信を深め、女性や女性の家族の生活を直接的に向上させられることが証明されています。また、このプログラムはP.A.C.E. に参加する16ヶ国からのサプライヤーの投資利益率の主要測定基準である縫製工場従業員の離職率や常習的欠勤率を下げるという実績も収めています。

The Short Story

各種団体、提携工場との連携

  • Gap Inc. は戦略的サプライヤーと緊密に連携し、社会問題や環境問題に対応できる能力を構築するため支援をしています。
  • ベターワークやヴェリテといった団体との連携を通じて、業界に先駆けて労使関係の向上や労働者の雇用環境と心身の健康の増進を図るプログラムを実施しています。
  • ソーシャル&レイバーコンバージェンスプロジェクトとともに、靴製造業、アパレル製造業共通の工場用の社会的パフォーマンス、労働パフォーマンス測定ツールの開発を支援しています。
  • 当社の戦略的サプライヤーの20%にあたる164の製造施設が、複数ブランドの監査を重複して実施せずに済むようベターワークのプログラムに参加しています。
  • ワークプレイス・コーペレーション・プログラムを通じ9ヶ国31ヶ所の製造施設でトレーニングを実施し、労使間の対話や関係の質の向上に努めました。